松江めぐり

#01    賞味期限はその日限り ?! 松江で楽しむ桜餅スタイル


山陰の冬は長く、暗い - 。

立春を過ぎたあたりから、春を待ちわびる気持ちが日に日に増していきます。

そんな頃、松江市内の和菓子店にならびはじめるのが桜餅。優しい見た目につい顔がほころびます。

 

桜餅には「関東風」と「関西風」があります。

「関東風」の誕生は江戸時代、八代将軍・徳川吉宗が整備した桜の名所 隅田川河畔が舞台。そこにあるお寺 長命寺の門前で売り出されたことが発祥と言われています。クレープ状の生地で餡を包み、外側を塩漬けした桜の葉で巻いたお餅で、ふんわり、もっちりとした食感が特徴です。

一方の「関西風」は大阪にあるお寺 道明寺で作られた糒 (ほしい) が発祥と言われています。もち米を蒸して乾燥させ粗挽きにして作った道明寺粉を使って餡を包み、外側を塩漬けした桜の葉で巻いたお餅。つぶつぶとした食感が特徴です。

 

松江の桜餅は「関東風」。

松江藩の家老を勤めた有澤宗閑が隅田川の桜餅を再現して作らせたのがはじまりだと言われています。

桜の時期になると、宗閑は所有する菅田山荘を一般に開放しました。山荘は多くの市民で賑わい、桜餅はお花見にはかかせない楽しみになりました。

「桜餅なんてどこも同じでしょ ? 」と思われますか。
あまり知られていませんが、京都、金沢と並んで松江は日本三大菓子処。

市内には老舗の和菓子店が各所にあります。

どうやら松江っ子には「ここの桜餅が好き ! 」というお気に入りがあるようです。

 

今しか出会えない春の楽しみ。

それぞれのお店のこだわりの桜餅をご紹介します。


 

【桂月堂】関東風


小麦粉ともち粉を配合し、ぷっくりと皮が厚く、モチモチしているのが特徴です。桂月堂の餡はすべて自家製。和菓子によって使う餡を変えており、桜餅用は糖度を控えめにしたこし餡に仕上げています。


人気の桜餅ですが、日持ちがしないため、お土産に持って帰りたいと言われても販売が難しかったそう。そこで生まれたのが「桜ごよみ」。桜葉を模したういろうの皮で桜餡を包み、花弁をトッピングしたなんとも春らしいお菓子で、製造が間に合わないくらい毎年人気なのだそうです。賞味期限は 10 日ほどです。



【彩雲堂】関西風

 

島根県奥出雲産仁多米のもち米を使用しています。彩雲堂の若草は仁多米を用いて作られるため、同じ仁多米を使用して道明寺を作っているそうです。もち米を蒸す時間は気温により調整し、芯が残らないように、かつ粘りがでないように製造しています。

季節生菓子のおすすめは、春告鳥といわれる「うぐいす」。羽を広げる姿がかわいらしい。若草色の練切の中はこし餡です。(※ 3 月 3 日で販売は終了)



【清松庵たちばな】関東風

 

くるりとかわいく巻いたロールタイプで、桜色の巻物のよう。生地には本葛が使用されており、もちもちとした食感です。こし餡とつぶ餡の 2 種類を販売しているので食べ比べてみても楽しい。


このほか、春めいた上生菓子「花くれない」もおすすめ。ふくらみかけた蕾を思わせる愛らしい花弁 (練切) の中は、求肥で包んだ上品な甘みの白餡です。


清松庵たちばな公式HP
MAP

 

【高見一力堂】関東風

 

クレープ生地の柔らかさを長持ちさせるために、小麦粉、米粉、もち粉などを秘伝のレシピで配合しています。食べ頃のおすすめは、作ってから 1 、2 時間後だそう。桜葉の香りと塩気がクレープ生地表面に程よく移り、マイルドな塩味があっさりとしたこし餡の甘さを引き立てます。


桜の季節に合わせておすすめなのが、穏やかな春色の上生菓子「しだれ桜」。練切で中はこし餡。店舗販売のほか、しだれ桜の名所・千手院のお茶処「誠心亭」でも桜の季節限定で提供されます。


【風流堂】関東風・関西風

 


桜餅はそれぞれのファンの要望に応えて、関東風と関西風の 2 種類を曜日で分けて販売しています。関西風は島根県産のもち米を使用して、粒は不揃いですが、ふっくらとした手作りの良さがあります。自家製のこし餡を使い、すっきりとシンプルで何度でも食べられる味を目指しています。

3 月に日本橋三越本店でのみ販売されていた風流堂の『桜ほのか』は「第 3 の桜餅」がテーマです。
仁多米の米粉を使ったもちもち食感の生地、刻んだ国産桜葉や、「李白」純米酒で風味付けしたこし餡、島根県産の桜の塩漬けなど、島根の素材を使っていて、見た目も可愛い桜餅です。(※ 4/1-4/10 まで、寺町本店・京橋店限定で販売)



【福田屋】関東風


 

皮は島根県奥出雲産のもち粉を、餡は「朝汐餡」を使用しています。「朝汐餡」とは、小豆の皮を剝いて作る餡のことで、しっとりやわらかく、雑味がなく、甘すぎないのが特徴。そういうわけなのか、なんとも上品な佇まいの桜餅。「福田屋さんの桜餅が食べたい」と県外から取り寄せる人もいるそうです。



(五十音順に掲載)





<編集後記>
この 1 か月でいろんなお店の桜餅をいただき、「利き酒」ならぬ「利き桜餅」ができるほどになりました。

そして、結論。どのお店の桜餅もおいしい。毎日食べても飽きません。すっかり桜餅のとりこです❤

ご紹介した商品はいずれも 4 月上旬までの発売なので、残りあと 1 か月ちょっと。ぜひ食べくらべしてみてください !

(掲載日:2022.3.3)

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